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ストレスチェック実施規程には何を書く? 調査審議11項目と50人未満の社内ルール

公開日:2026年9月22日 / 最終更新:2026年9月22日

🤖 3行でわかる実施規程の決め方

  • 厚生労働省のストレスチェック指針は、衛生委員会等で調査審議すべき事項として11項目を挙げ、事業者はその結果を踏まえて実施に関する規程を定め、あらかじめ労働者に周知するものとしている。
  • 衛生委員会の設置義務は常時50人以上の事業場(労働安全衛生法施行令9条)にあるため、50人未満の事業場にはその「場」がない。厚労省の小規模事業場向けマニュアルは、労働安全衛生規則23条の2に基づく「関係労働者の意見を聴く機会」の活用を挙げている。
  • 同マニュアルが社内ルールとして挙げるのは、実施体制・実施方法・記録の保存・情報管理・情報の開示、訂正等および苦情処理・不利益な取扱いの防止の6項目。同マニュアル上は、規程という文書形式をとるかどうかは事業場の判断として示されている。
編集

執筆・編集:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)

中小企業向けストレスチェック外部委託サービスの比較メディア「ストレスチェック比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省の公表資料および法令本文をもとに作成し、内容を確認しています。

ストレスチェックの準備を始めると、多くの担当者が「調査票を配る前に、社内で何をどこまで決めておけばいいのか」でつまずきます。実施時期や委託先だけでなく、誰が結果を見るのか、記録をどこに何年置くのか、受けなかった人をどう扱うのか——これらを事前に決めて文書にしたものが「実施規程」です。この記事では、決めるべき事項の一覧を厚生労働省の指針と小規模事業場向けマニュアルの2つの公表資料から整理し、衛生委員会を持たない50人未満の事業場が誰の意見を聴いて決めることになるのかを、条文にさかのぼって確認します。

実施規程とは何か(指針での位置づけ)

ストレスチェック制度について、厚生労働省は「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成27年4月15日 心理的な負担の程度を把握するための検査等指針公示第1号。最終改正は平成30年8月22日 同公示第3号。以下「指針」)を公示しています。

この指針は「4 ストレスチェック制度の手順」で、制度に基づく取組の最初のステップを次のように示しています。

  • ア 基本方針の表明——事業者が、法・規則・指針に基づき、ストレスチェック制度に関する基本方針を表明する
  • イ① 衛生委員会等において、ストレスチェック制度の実施方法等について調査審議を行い、その結果を踏まえ、事業者がその事業場におけるストレスチェック制度の実施方法等を規程として定める

つまり実施規程は、調査票を配る前の段階で作るものとして位置づけられています。指針の「5 衛生委員会等における調査審議」では、事業者は調査審議の結果を踏まえて法令に則ったうえで実施に関する規程を定め、これをあらかじめ労働者に対して周知するものとする、とされています。作って終わりではなく、事前に労働者へ知らせるところまでが一続きの手順です。

なお指針でいう「衛生委員会等」は、指針の本文中で衛生委員会または安全衛生委員会を指すものと定義されています。後述のとおり、この点が50人未満の事業場では実務上の分かれ目になります。

衛生委員会等で調査審議すべき11項目

先にお読みください:この11項目は50人以上の事業場を前提とした整理です

本記事が引用する指針は最終改正が平成30年8月22日で、50人未満の事業場については「当分の間、ストレスチェックの実施は努力義務とされている」と記載されたままです(指針12(4))。2028年4月1日の義務化拡大に伴う指針・省令の改正は、本記事の更新時点では公表されていません。したがって以下の11項目は、現時点では50人以上の事業場を前提とした整理です。50人未満の事業場にどこまで同じ内容が求められるかは今後の改正内容によるため、50人未満の事業場向けに公表された資料の内容は4章で別に扱います。実際の対応範囲は所轄の労働基準監督署の案内もあわせてご確認ください。

労働安全衛生規則22条は、衛生委員会の付議事項として「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」(同条10号)を挙げています。指針は、この事項を調査審議するにあたってはストレスチェック制度に関し次の11項目を含めるものとする、としています。

#調査審議すべき事項(当サイトで項目名を要約)具体的に決めることの例(指針の記載より)
制度の目的に係る周知方法一次予防が目的でメンタルヘルス不調者の発見を一義的な目的とはしない、という趣旨を事業場内で周知する方法
制度の実施体制実施者・その他の実施事務従事者の選任。実施者が複数なら共同実施者と実施代表者の明示。外部機関に全部委託する場合は委託契約の中でこれらを明示させること
制度の実施方法使用する調査票とその媒体/ストレスの程度の評価方法と高ストレス者の選定基準/実施頻度・実施時期・対象者/面接指導の申出の方法/面接指導の実施場所等
集団ごとの集計・分析の方法集計・分析の手法/対象とする集団の規模
受検の有無の情報の取扱い事業者が受検の有無を把握する方法/受検の勧奨の方法
結果の記録の保存方法記録を保存する実施事務従事者の選任/保存場所と保存期間/実施者等以外に閲覧されないためのセキュリティ確保等の情報管理の方法
結果の利用目的・利用方法本人への通知方法/実施者による面接指導申出の勧奨方法/結果・集団分析結果・面接指導結果の共有方法と共有範囲/事業者へ提供する際の本人の同意の取得方法/同意を得て提供する情報の範囲/集団分析結果の活用方法
情報の開示・訂正・追加・削除の方法開示等の手続き/開示等の業務に従事する者による秘密の保持の方法
情報の取扱いに関する苦情の処理方法苦情の処理窓口を外部機関に設ける場合の取扱い(窓口スタッフが社内の産業保健スタッフと連携できる体制の整備が望ましい)
労働者が受けないことを選択できること受検の義務はないが全員の受検が望ましい、という趣旨を事業場内で周知する方法
労働者に対する不利益な取扱いの防止禁止される不利益取扱いを事業場内で周知する方法

一覧にすると、⑥⑦⑧⑨が個人情報の取扱いに集中していることが分かります。ストレスチェックの結果は本人の同意なく事業者に提供できない情報であるため、「誰がどこまで見るか」の線引きを事前に文書で固めておくことが、この制度の準備作業の中心になります。結果の共有範囲や保存については、ストレスチェックの結果は会社の誰が見られる?同意・5年保存・共有範囲で条文レベルの整理をしています。

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50人未満には衛生委員会がない。では誰と決めるのか

ここまでの手順は「衛生委員会等」を前提にしています。しかし衛生委員会を設けるべき事業場は、労働安全衛生法施行令9条により常時50人以上の労働者を使用する事業場と定められています。産業医の選任義務も同施行令5条で同じく常時50人以上です。2028年4月1日からストレスチェックが義務の対象となる50人未満の事業場には、設置義務がない以上、指針が想定する「調査審議の場」が多くの場合は存在しないことになります(設置義務がないだけで、任意に衛生委員会等を設けることは妨げられません)。

この空白について、厚生労働省は2026年2月25日に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月。以下「小規模マニュアル」)を公表しました。50人未満の事業場を主な対象に、実施体制・実施方法を具体的に示した資料です。

小規模マニュアルの「1-2 関係労働者の意見の聴取」は、事業者は制度の導入にあたり、労働者が安心して受検できるように実施体制・実施方法等について関係労働者の意見を聴く、としたうえで、その方法について次のように述べています。

  • 労働者数50人未満の事業場では、労働安全衛生規則23条の2に基づき、安全または衛生に関して関係労働者の意見を聴く機会を設けることとされているので、このような機会を活用することが考えられる
  • その機会は必ずしも会議体の構成をとる必要はないが、事業場の実情に応じて実効性が確保できる方法により、できるだけ様々な現場や立場の労働者から意見を聴くことが重要である
  • 事業者としての方針を表明しつつ、社内ルールの案をあらかじめ作成したうえで事業場内に周知し、労働者に意見を募るといった方法も考えられる
  • 実施後にも、実施状況やそれを踏まえた実施方法等の改善等について関係労働者の意見を聴くことが望まれる

根拠条文にあたる労働安全衛生規則23条の2は、「委員会を設けている事業者以外の事業者は、安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴くための機会を設けるようにしなければならない。」という一文です。委員会を持たない事業場に向けた規定であることが、条文自体から読み取れます。

小規模マニュアルは、意見を聴く機会の実例として、定例の業務ミーティングや朝礼などの打合せの場、他の委員会の開催に併せる形、運行管理関係の安全会議の場などを挙げています。新しく会議体を立ち上げる話ではなく、すでにある集まりを使う想定が示されている点は、人員に余裕のない事業場にとって現実的な手がかりになります。

小規模事業場の社内ルール6項目

小規模マニュアルの「1-3 社内ルールの作成・周知」は、事業者は関係労働者の意見聴取の結果を踏まえてストレスチェック制度の社内ルールを作成し、周知する、としています。そして社内ルールとして定めることが望まれる事項として、次の6つを挙げ、個人情報の取扱いは明確にしておくことが重要としています。

#社内ルールの項目マニュアル掲載の「社内ルールの例」での書かれ方
実施体制外部機関(実施者)に委託して実施する/委託先との契約・連絡調整等を行う実務担当者は総務担当(氏名)とする/医師の面接指導は外部の医師に依頼する
実施方法年1回、時期を決めて全ての従業員を対象に実施/調査項目と回答形態(Web/紙)は実施者の提案を踏まえ決定/配布・回収・データ入力等は実施者が行い、個人結果は実施者から直接本人に通知される/高ストレスの人は会社に申し出ることで面接指導を受けられる/会社は実施者から集団分析結果(個人が特定されない形のもの)の提供を受け、職場環境改善の取組に活用する
記録の保存集団分析結果、面接指導結果(意見書)は会社において5年間保存する
情報管理個人結果は本人の同意なく会社が知ることはない/会社が入手した面接指導結果はその目的の範囲でのみ使用する
情報の開示、訂正等及び苦情処理開示を求める際・苦情がある際の相談先(例では総務担当)を明示
不利益な取扱いの防止受けないことや結果を理由とした配置・昇進・評価等の不利益取扱いはない/面接指導の申出や結果を理由とした不利益は生じない

指針の11項目と並べると、小規模マニュアルの6項目は同じ論点をより少ない区分にまとめたものであることが見えてきます。以下は当サイトで両資料を並べて整理したもので、マニュアル自身がこの対応関係を明示しているわけではありません。たとえば指針の⑥(記録の保存方法)と⑦(利用目的・利用方法)にあたる内容は、小規模マニュアルでは③記録の保存と④情報管理に置かれています。指針の①(目的の周知)と⑩(受けない選択ができること)にあたる内容は、小規模マニュアルでは「1-1 事業者による方針の表明」で従業員に伝える内容として扱われています。

文書の形式についても記載があります。小規模マニュアルは「仮に、社内ルールを規程として作成する場合は、巻末資料『ストレスチェック制度実施規程(モデル例)』を参考にしてください」と書いており、あわせて「この規程例は、定めておくと良いと考えられる事項を詳細にお示ししたものであり、あくまで一例です。それぞれの事業場の実情に応じてアレンジしてください」と付記しています。周知の方法としては、事業場内イントラネットへの掲載や規程の配付等が挙げられています。

つまり小規模マニュアル上は、社内ルールを定めて周知することが実施事項として書かれ、規程という文書形式をとるかどうかは事業場の判断として示されている、という整理になります。自社にどこまでの対応が求められるかについては、所轄の労働基準監督署や産業保健総合支援センターの地域窓口等にご確認ください。

モデル規程の「変更手続き」が50人以上版と違う

厚生労働省は、50人以上の事業場を対象とした「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(平成27年5月/改訂 平成28年4月)にも実施規程(例)を載せています(同マニュアル16頁。同マニュアルは「はじめに」で、ストレスチェック制度の実施が義務付けられている労働者数50人以上の事業場において事業場内産業保健スタッフが参照できるよう構成した、としています)。小規模マニュアルの巻末にも実施規程(モデル例)があります(同マニュアル34頁)。どちらも第1条は「規程の目的・変更手続き・周知」ですが、第3項の書きぶりが異なります。

資料第1条第3項(規程の変更手続き)
ストレスチェック制度実施マニュアル(平成28年4月改訂)の規程(例)会社がこの規程を変更する場合は、衛生委員会において調査審議を行い、その結果に基づいて変更を行う。
小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月)の規程(モデル例)会社がこの規程を変更する場合は、関係労働者の意見を聴き、その結果に基づき変更を行う。

同じ趣旨の条文が、事業場の規模に応じて手続きの相手を変えていることが分かります。既存の規程ひな形をインターネットで拾って使う場合、この第1条第3項が「衛生委員会において調査審議を行い」のままだと、衛生委員会を設置していない事業場では実行できない手続きを自ら規程に書き込むことになります。ひな形を流用するときに最初に確認したい箇所です。

社内で誰が中心になって進めるか

意見聴取と社内ルール作成の担い手についても、小規模マニュアルは「2-1 実務担当者の選任」で規模別に示しています。

事業場の規模小規模マニュアルの記載
労働者数10人以上50人未満労働安全衛生規則12条の2に基づき業種により衛生推進者または安全衛生推進者を選任することとされている。実務担当者にはこれらの者(メンタルヘルス推進担当者を選任している場合はその者)を選任することが望まれ、関係労働者の意見聴取もこれらの者を中心に実施することが望まれる
労働者数10人未満衛生推進者または安全衛生推進者がいないため、事業者自らが衛生推進者等に求められる役割を踏まえつつ、事業場内の実務を担うことが考えられる

根拠となる労働安全衛生規則12条の2は、安全衛生推進者等を選任すべき事業場を「常時十人以上五十人未満の労働者を使用する事業場」と定めています。10人以上の事業場であれば、すでに選任している衛生推進者等がストレスチェックの実務担当者を兼ねる形が、資料上の標準的な想定ということになります。

なお小規模マニュアルは、実務担当者は個人のストレスチェック結果等の健康情報を取り扱うことがない立場であるとしたうえで、自身はこうした情報を取り扱わないことを徹底するなど、個人情報保護への配慮が求められるとしています。実務担当者と、結果を取り扱う実施者・実施事務従事者は別の役割です。この役割分担については従業員50人未満のストレスチェック実施方法およびストレスチェックの質問票57項目とは?内容と誰が実施者になれるかもあわせてご覧ください。

準備を始める時期の目安については、施行日と改正法の経緯を整理した【2028年4月義務化】従業員50人未満のストレスチェック義務化とはで扱っています。

よくある質問(FAQ)

Q. 衛生委員会がない50人未満の事業場は、ストレスチェックの実施方法を誰と決めればよいですか?

A. 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月)は、労働安全衛生規則第23条の2に基づく「関係労働者の意見を聴く機会」を活用することが考えられる、としています。同マニュアルは、この機会は必ずしも会議体の構成をとる必要はないが、事業場の実情に応じて実効性が確保できる方法により、できるだけ様々な現場や立場の労働者から意見を聴くことが重要であるとしています。社内ルールの案をあらかじめ作成して周知し、労働者に意見を募る方法も挙げられています。

Q. 小規模事業場でも、正式な「規程」の形にしなければいけませんか?

A. 同マニュアルの1-3は、事業者は意見聴取の結果を踏まえて「社内ルール」を作成し周知する、という書き方をしており、規程については、仮に社内ルールを規程として作成する場合は巻末資料「ストレスチェック制度実施規程(モデル例)」を参考にしてください、としています。つまり同マニュアル上は、社内ルールを定めて周知することが実施事項であり、規程という文書形式をとるかどうかは事業場の判断として示されています。自社に求められる対応の範囲は、所轄の労働基準監督署や産業保健総合支援センター等にご確認ください。

Q. 実施規程の作成や意見聴取は、社内の誰が中心になって進めるのですか?

A. 同マニュアルは、労働者数10人以上50人未満の事業場では労働安全衛生規則第12条の2に基づき業種により衛生推進者または安全衛生推進者を選任することとされているとしたうえで、実務担当者にはこれらの者を選任することが望まれ、関係労働者の意見聴取もこれらの者を中心に実施することが望まれるとしています。労働者数10人未満の事業場については衛生推進者等がいないため、事業者自らが事業場内の実務を担うことが考えられる、としています。

参考・出典

※本記事は、上記の法令本文および厚生労働省の公表資料に記載されている内容を整理してお伝えするものです。個別の事業場にどこまでの対応が求められるかの判断、および労働安全衛生法上の義務の範囲については、所轄の労働基準監督署、産業保健総合支援センター、社会保険労務士等の専門家にご確認ください。なお、50人未満の事業場に対するストレスチェックの義務化は2028年4月1日施行であり、実施方法の詳細は今後の省令・指針の改正等により変更される可能性があります。引用した指針の最終改正は平成30年8月22日時点のものです。最新の情報は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。

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