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従業員50人未満のストレスチェック実施方法 ―産業医がいない会社の進め方

公開日:2026年7月8日 / 最終更新:2026年7月10日

🤖 3行でわかる50人未満のストレスチェック実施方法

  • ストレスチェックの実施者になれるのは医師・保健師、または一定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師に限られ、資格のない総務担当者だけでは実施できない。
  • 産業医がいない事業場は、労働基準監督署の管轄ごとに設置された地域産業保健センター(地さんぽ)を無料で利用できるほか、実施者を手配してくれる外部委託サービスを使う方法がある。
  • 厚生労働省は2026年2月に「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しており、小規模事業場特有のプライバシー配慮の考え方や実施体制の作り方が示されている。
監修

監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)

中小企業向けストレスチェック外部委託サービスの比較メディア「ストレスチェック比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省の公表資料をもとに作成し、内容を確認しています。

「ストレスチェックをやろうにも、産業医と契約していないし、誰が実施すればいいのか分からない」——従業員50人未満の会社の総務担当者からよく聞かれる悩みです。報道によれば、2022年時点で小規模事業場(従業員50人未満)のストレスチェック実施率は約32%にとどまり、実施が義務化されている50人以上の事業場との間には大きな開きがあるとされています(数値は調査・集計方法により差があります)。この記事では、産業医がいない小規模事業場が現実的にどう実施すればよいか、実施者の要件から外部委託の見極め方まで整理します。

ストレスチェックはどんな手順で実施する?

ストレスチェックの実施は、おおまかに次の流れで進みます。会社の規模にかかわらず、基本の型は共通です。

  • 実施体制の決定:誰が実施者(医師・保健師等)になるか、誰が実施事務従事者(調査票の配布・回収など)になるかを決める
  • 衛生委員会等での調査審議:実施方法・実施時期・結果の取り扱いなどをあらかじめ話し合う(衛生委員会がない小規模事業場では、労働者の意見を聴く機会を設ける)
  • 調査票の配布・回収:厚生労働省の標準調査票(57項目)またはこれに準ずる調査票を用いる
  • 実施者による結果の評価・高ストレス者の選定
  • 本人への結果通知:結果は実施者から直接本人に通知し、本人の同意なく事業者に提供しない
  • 希望者への医師の面接指導:高ストレスと判定された労働者が申し出た場合に実施
  • 集団分析(努力義務):部署単位などでの傾向分析。今回の改正でも義務化はされておらず、引き続き努力義務にとどまる

このうち、多くの小規模事業場が最初につまずくのが「実施体制の決定」、特に実施者を誰にするかという点です。

誰が実施者になれる?

ストレスチェックの「実施者」になれるのは、次のいずれかに該当する人に限られます。

資格備考
医師産業医に限らず、要件を満たす医師であれば実施者になれる
保健師
歯科医師一定の研修を修了していること
看護師一定の研修を修了していること
精神保健福祉士一定の研修を修了していること
公認心理師一定の研修を修了していること

重要なのは、人事権を持つ人物(社長・人事担当役員など)は実施者になれないという点です。これは、人事評価に影響しうる立場の人が結果を知ることで、労働者が正直に回答しにくくなることを防ぐための制度設計です。また、資格を持たない総務担当者が単独で実施者を担うこともできません。総務担当者が関われるのは、調査票の配布・回収といった「実施事務従事者」としての事務作業までです。

社労士ブログや相談窓口には、「実施者や実施事務従事者の選び方が分からない」「無資格・人事権のない担当者を実施者にしてよいか」といった中小企業からの具体的な質問が実際に寄せられています。制度の理解自体にハードルがあることは珍しくありません。

産業医がいない場合はどうする?

50人未満の事業場は産業医の選任義務がないため、社内に実施者の要件を満たす人がいないケースが大半です。その場合、主に次の3つの選択肢があります。

選択肢1:地域産業保健センター(地さんぽ)を利用する

地域産業保健センターは、労働基準監督署の管轄区域ごとに設置されている、労働者数50人未満の事業場を主な対象とした国の支援窓口です。医師による面接指導や健康相談などを原則無料で利用できます。産業医と契約する費用をかけられない小規模事業場にとって、まず相談すべき窓口の一つです。ただし、ストレスチェックの調査票配布から結果通知まで一連の運営を丸ごと代行してくれるとは限らず、面接指導の受け皿や個別相談としての位置づけが中心となっている地域もあります。対応可能な内容は地域によって差があるため、最寄りの地域産業保健センターに直接確認することをおすすめします。

選択肢2:外部委託サービスを利用する

ストレスチェックの実施を代行する民間の外部委託サービスを利用すれば、調査票の配布から結果通知、高ストレス者の判定まで一括して任せられます。実施者となる医師・保健師をサービス側が手配してくれるプランが一般的で、社内に有資格者がいなくても実施可能になります。費用や対応範囲はサービスによって幅があるため、複数社を比較して自社に合ったものを選ぶことが重要です。

選択肢3:地域の医師会・産業医紹介サービス経由で契約する

地域の医師会に実施者としての医師を紹介してもらう方法もあります。ただし、すべての医師会が紹介に対応しているわけではなく、契約成立までに時間がかかることがある点には留意が必要です。産業医紹介サービスを使う場合は、紹介手数料の仕組みや契約条件を事前に確認しておくとよいでしょう。

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厚労省の「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」とは?

厚生労働省は2026年2月、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しました。これは、労働者のプライバシー保護と実効性のある実施体制・実施方法をどう両立させるかについて、小規模事業場向けにまとめられた資料です。改正法の審議過程でも「50人未満の事業場の負担等に配慮し、施行までの十分な準備期間を確保する」という方針が明記されており、このマニュアルはその支援策の一つに位置づけられます。実施体制の作り方に迷った場合は、まずこのマニュアルに目を通すことをおすすめします。

なお、50人未満事業場への実施義務化は2028年4月1日に施行されます。この日付は、改正労働安全衛生法(正式名称「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」・令和7年法律第33号・2025年5月14日公布)に基づき、労働政策審議会の政令案要綱・答申(2026年5月18日)で示された後、施行期日を定める政令(令和8年政令第195号・2026年6月10日公布)により正式に確定しました。実施方法等の詳細は今後の省令・指針の改正により変わる場合がありますので、最新の公式情報もあわせてご確認ください。

小規模事業場はプライバシー保護に何を注意すべき?

従業員数が少ない職場ほど、「誰がどう回答したか」が推測されやすいという構造的な課題があります。上司に結果が伝わるのではという不安から、労働者が正直に回答しなくなれば、ストレスチェック本来の目的が果たせません。小規模事業場では特に、次の点に注意が必要です。

  • 結果は実施者から本人に直接通知し、本人の同意なく事業者に開示しないことを徹底する
  • 実施事務従事者を、人事情報に日常的にアクセスできる立場の人にしない(外部委託で運営自体を切り離すのも一つの方法)
  • 集団分析を行う場合、一定人数に満たない部署では、個人が推測できてしまう形での結果提供を避ける
  • 調査票やデータの保管・廃棄ルールを、実施前にあらかじめ決めておく

こうした配慮は、義務だからやるということ以上に、労働者が安心して正直に回答できる環境をつくり、結果を意味あるものにするための土台でもあります。

外部委託を選ぶならどこを見極める?

外部委託サービスを検討する際は、料金の安さだけでなく、次のような点を確認すると自社に合ったサービスを選びやすくなります。

  • 実施者の手配が含まれているか:医師・保健師の手配込みのプランか、自社で別途確保する必要があるかを確認する
  • 面接指導への対応:高ストレス者が面接指導を希望した場合、医師による面接指導まで一貫して対応できるか
  • 集団分析レポートの分かりやすさ:専門用語だけの数値の羅列ではなく、現場が読み解ける形で提供されるか
  • プライバシー管理の体制:小規模事業場向けに個人特定リスクへの配慮がなされているか
  • 料金体系:1人あたりの単価に加え、集団分析・面接指導・レポート作成などが別料金になっていないか

料金は判明分のみを記載し、不明な点は正直に「要問い合わせ」とするサービスも多くあります。見積もりを取る際は、複数社を横並びで比較し、対応範囲の違いを確認することをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q. 産業医と契約していない会社は、誰がストレスチェックの実施者になればよいですか?

A. 実施者になれるのは医師・保健師、または一定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。社内に該当者がいない場合は、地域産業保健センター(地さんぽ)に無料で相談できるほか、実施者を手配してくれる外部委託サービスを使う方法もあります。

Q. 地域産業保健センター(地さんぽ)とは何ですか?無料で使えますか?

A. 労働者数50人未満の事業場を主な対象に、労働基準監督署の管轄区域ごとに設置されている国の相談窓口で、医師による面接指導や健康相談などを原則無料で利用できます。対応内容は地域差があるため、最寄りのセンターに直接確認することをおすすめします。

Q. 従業員10人程度の小さな会社でも、個人が特定されない実施は可能ですか?

A. 結果を本人の同意なく事業者に開示しないルールの徹底や、外部の実施事務従事者への運営委任などの配慮で対応可能です。厚労省の「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」にも配慮の考え方が示されています。

参考・出典

※本記事は制度の概要と実施方法を分かりやすく解説するものです。従業員50人未満の事業場へのストレスチェック義務化は、改正労働安全衛生法(正式名称「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」・令和7年法律第33号・2025年5月14日公布)に基づき、施行期日を定める政令(令和8年政令第195号・2026年6月10日公布)により2028年4月1日施行と定められました。実施方法等の詳細は今後の省令・指針の改正により変わる場合があります。実施者の選任・面接指導の実施体制など、実務上の詳細は事業場ごとに異なりますので、必要に応じて専門家・所轄の労働基準監督署や最新の公式情報をご確認ください。

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