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ストレスチェックを受けたくないと言われたら? ―会社の正しい対応

公開日:2026年7月8日 / 最終更新:2026年7月10日

🤖 3行でわかる受検拒否への対応

  • ストレスチェックは事業者に実施義務があるが、労働者本人には受検義務がなく、会社は受検を強要できない。
  • 厚生労働省のストレスチェック指針は、受検しないことを理由とした懲戒処分などの不利益取扱いを明確に禁止している。
  • 会社にできるのは業務命令ではない形での受検勧奨であり、方法は事前に衛生委員会等で話し合い労働者に周知する必要がある。
監修

監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)

中小企業向けストレスチェック外部委託サービスの比較メディア「ストレスチェック比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」および厚生労働省公式サイトの公表資料をもとに作成し、内容を確認しています。

改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号・2025年5月14日公布)に基づき、2028年4月1日から労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されます※。実施義務は事業者側にありますが、「受けたくない」と言う従業員に対して、会社はどこまで対応を求めてよいのでしょうか。この記事では、厚生労働省の指針・マニュアルに基づき、受検義務の有無と、拒否された場合の正しい対応を整理します。

※従業員50人未満の事業場へのストレスチェック義務化は、改正労働安全衛生法(正式名称「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」・令和7年法律第33号・2025年5月14日公布)に基づき、施行期日を定める政令(令和8年政令第195号・2026年6月10日公布)により2028年4月1日施行と定められました。実施方法等の詳細は今後の省令・指針の改正により変わる場合があります。

ストレスチェックに労働者の受検義務はあるのか

結論から言うと、ストレスチェックは労働者に受検義務がありません。厚生労働省の労働者向け解説ページ「確かめよう労働条件」には、次のように明記されています。

「健康診断とは違い、ストレスチェックには労働者に受検の義務はありません。」

健康診断(労働安全衛生法第66条)は労働者にも受診義務が課されている一方、ストレスチェック(同法第66条の10)は制度設計そのものが異なります。事業者には実施義務がありますが、個々の労働者に対して受検を義務付ける規定は法令上置かれていません。これは、メンタルヘルス不調で治療中など特別な事情がある労働者にまで受検を強いる必要はない、という制度趣旨によるものです。

会社は受検を強要できるか

労働者に受検義務がない以上、会社が受検を強要することはできません。厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(平成27年5月/改訂平成28年4月)には、次のように明記されています。

「ストレスチェックを受検すべきことを就業規則に規定し、受検しなかったことをもって懲戒処分の対象とすることは、受検の強要や受検しない労働者に対する不利益取扱いに当たる行為であり、行ってはいけません。」(同マニュアルP.47)

一方で、会社が完全に何もできないわけではありません。同マニュアルでは、事業者は労働者個々人の受検の有無を把握し、受検を勧奨することは認められるとしています。ただし、勧奨と強要の境界線には注意が必要です。マニュアルは「業務命令のような形で強要するようなことのないよう、受検勧奨のやり方については衛生委員会等でよく話し合い、労働者に周知しておく必要がある」としており、勧奨の方法自体を事前に社内で検討・周知しておくことが求められています。

行為可否根拠
未受検者への受検の呼びかけ(勧奨)可能ストレスチェック指針(マニュアルP.47)
業務命令として受検を指示すること不可受検の強要にあたる
就業規則で受検を義務化し懲戒処分の対象とすること不可法の趣旨に反する(マニュアルP.47)
受検しないことを理由とした不利益な取扱い不可法第66条の10・ストレスチェック指針(マニュアルP.100)

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受検を拒否されたら、会社はどう対応すべき?

従業員から「受けたくない」と言われた場合、会社が取れる現実的な対応は次のようなものです。

1. まずは理由を確認する(強制ではなく対話として)

受検したくない理由は、単なる面倒くささから、メンタルヘルス不調による負担感、結果が人事評価に影響するのではという不安まで様々です。業務命令として問い詰めるのではなく、任意の対話として理由を聞くことで、誤解が原因であれば解消できる場合があります。

2. 制度の目的・データの取扱いを丁寧に説明する

ストレスチェックの個人結果は、本人の同意なく事業者に提供されない仕組みになっています。「受けると会社に筒抜けになる」という誤解が拒否の背景にあることも多く、この点を正確に説明するだけで受検につながるケースもあります。

3. 勧奨にとどめ、それ以上は強制しない

説明を尽くしても本人が受けないと判断した場合、それ以上の強要はできません。未受検であることを記録に残しつつ、次回以降も同様に任意の勧奨を続けるという対応が、法令上許容される範囲です。

4. 受検しないことを理由に評価・処遇を変えない

最も重要なのは、受検しなかったことを人事評価や処遇に反映させないことです。次章で詳しく解説しますが、これは法律上明確に禁止されている行為です。

不利益取扱い禁止の原則とは?

労働安全衛生法第66条の10第3項は、面接指導の申出をしたことを理由とした不利益取扱いを禁止しています。これを受けて、厚生労働省のストレスチェック指針(マニュアルP.100「10 労働者に対する不利益な取扱いの防止」)は、禁止される具体的な行為を次のように整理しています。

「ストレスチェックを受けない労働者に対して、これを理由とした不利益な取扱いを行うこと。例えば、就業規則においてストレスチェックの受検を義務付け、受検しない労働者に対して懲戒処分を行うことは、労働者に受検を義務付けていない法の趣旨に照らして行ってはならないこと。」(同マニュアルP.100)

禁止される不利益取扱いは、受検拒否だけでなく次のケースにも及びます。

  • ストレスチェック結果を事業者に提供することに同意しない労働者への不利益取扱い
  • 面接指導の要件を満たしているのに申出を行わない労働者への不利益取扱い
  • 面接指導の結果のみを理由とした、解雇・契約更新拒否・退職勧奨・不当な配置転換や役職変更

なお、厚生労働省の公式Q&Aでは、労働基準監督署への報告はストレスチェック制度の実施状況を把握するためのものであり、「受検率が低いことをもって指導することは考えていない」とされています。つまり、受検率の低さそのものが会社にペナルティをもたらす制度設計にはなっていません(ただし、事業者の実施義務そのものが果たされていない場合は別問題です)。

よくある誤解にはどんなものがある?

よくある誤解正しい理解
健康診断と同じように、労働者にも受検義務がある受検義務はない。事業者側にのみ実施義務がある
就業規則で受検を義務化すれば拒否できなくなる受検を義務付ける就業規則の規定・懲戒処分は法の趣旨に反し行ってはならない
受検しない社員は評価を下げてよい受検しないことを理由とした不利益取扱いは法律上禁止されている
受検率が低いと労基署に指導される受検率の低さのみを理由とした指導は想定されていない(厚労省公式Q&A)
会社は受検について何も言えない強要はできないが、業務命令にならない形での受検勧奨は可能

特に注意したいのは、「受検を義務化すれば安心」という発想です。厚生労働省のマニュアルが明示しているとおり、就業規則での義務化や懲戒処分は、労働者に受検義務を課していない法の趣旨そのものに反する対応であり、かえって法令違反のリスクを高めます。会社としてできることは、勧奨を尽くしたうえで、それでも受けない選択を尊重することです。

よくある質問(FAQ)

Q. ストレスチェックを受けない社員に、受検を義務付けて懲戒処分できますか?

A. できません。厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルでは、就業規則で受検を義務付け、受検しない労働者に懲戒処分を行うことは、労働者に受検を義務付けていない法の趣旨に照らして行ってはならないと明記されています。

Q. 受検を拒否されたら、会社は何もできませんか?

A. 強制はできませんが、勧奨は可能です。事業者は労働者の受検の有無を把握し、受けていない労働者に受検を勧奨できます。ただし業務命令のような形にならないよう、勧奨方法は事前に衛生委員会等で話し合い、労働者に周知しておく必要があります。

Q. 受検率が低いと、労働基準監督署から指導されますか?

A. 厚生労働省の公式Q&Aでは、労基署への報告は実施状況を把握するためのものであり、受検率の低さそのものをもって指導することは考えていないとされています。ただし事業者の実施義務自体が果たされていない場合は別問題です。

参考・出典

※本記事は2028年4月1日の施行を見据えた制度の概要を分かりやすく解説するものです。従業員50人未満の事業場へのストレスチェック義務化は、改正労働安全衛生法(正式名称「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」・令和7年法律第33号・2025年5月14日公布)に基づき、施行期日を定める政令(令和8年政令第195号・2026年6月10日公布)により2028年4月1日施行と定められました。実施方法等の詳細は今後の省令・指針の改正により変わる場合があります。受検勧奨の方法や不利益取扱いに関する解釈は、事業場の状況により異なる場合があるため、実際の運用にあたっては必ず厚生労働省の最新の公式情報をご確認いただくか、社会保険労務士・産業医等の専門家にご相談ください。

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