看護師のストレスチェック
―夜勤・交代制勤務がある職場の実施ポイント
🤖 3行でわかる看護師のストレスチェック
- 病院・クリニックも労働安全衛生法上の「事業場」であり、ストレスチェックの実施義務・努力義務の基準は一般企業と同じ。ただし夜勤・交代制勤務への配慮が実務上の課題になる。
- 日本看護協会の調査では、病気により1か月以上の連続休暇を取得した正規雇用看護職員のうち、メンタルヘルス不調者がいた病院は79.5%(2024年度実績)。
- 同調査で正規雇用看護職員の離職率は11.0%、新卒採用者の離職率は8.4%と報告されている。
監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)
中小企業向けストレスチェック外部委託サービスの比較メディア「ストレスチェック比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省・日本看護協会の公表資料をもとに作成し、内容を確認しています。
「新人看護師のストレスチェックをどう扱えばいいのか」「夜勤明けの職員に、いつ調査票を配ればいいのか」——病院・クリニックの担当者からは、一般企業とは違った悩みが寄せられます。制度そのものは他の職種と同じですが、夜勤・交代制勤務という働き方の特殊性が、実施のタイミングや配慮の設計に影響します。この記事では、看護師・医療機関特有の実態データと、実施上の注意点を整理します。
📑 この記事でわかること
病院・クリニックにも同じ制度が適用される
ストレスチェックは業種を問わず、労働安全衛生法上の「事業場」に適用される制度です。病院・クリニック・介護施設も例外ではなく、常時使用する労働者数が50人以上であれば実施義務、2028年4月からは50人未満の事業場にも実施義務が拡大されます。つまり、看護師だから特別な制度が用意されているわけではなく、一般企業と同じ枠組みの中で実施することになります。
ただし、実務上は「誰が対象になるか」の数え方で戸惑うケースがあります。常勤・非常勤・パート職員が混在する医療機関では、労働者数のカウント方法(週の所定労働時間等による算入基準)を事前に整理しておくと、後の混乱を避けられます。
看護師のメンタルヘルス、実態はどうなっている?
日本看護協会が実施している「病院看護実態調査」(2025年調査、2024年度実績)では、次のようなデータが報告されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 正規雇用看護職員の離職率 | 11.0% |
| 新卒採用者の離職率 | 8.4% |
| 既卒採用者の離職率 | 16.1% |
| 病気により1か月以上の連続休暇を取得した正規雇用看護職員のうち、メンタルヘルス不調者がいた病院の割合 | 79.5% |
| 該当病院におけるメンタルヘルス不調者の平均人数 | 5.4人 |
この調査はストレスチェックの実施状況そのものを対象にしたものではありませんが、看護職員の長期休職の背景にメンタルヘルス不調が広く関わっている実態がうかがえます。制度への対応を「義務だから仕方なく行う作業」ではなく、離職防止・人材確保の観点から位置づける病院も増えています。
夜勤・交代制勤務がある職場ならではの課題
一般企業の担当者がストレスチェックを設計する際にはあまり意識しない、医療機関特有の課題がいくつかあります。
- 勤務シフトのばらつき:日勤・準夜勤・深夜勤が交錯するため、全職員が同じタイミングで調査票に向き合うことが難しい
- 夜勤明けの疲労状態:疲労が強い状態での回答は、本来の心理状態を正確に反映しない可能性がある
- 部署・病棟単位での特性差:救急・ICU・一般病棟など、部署によってストレス要因が大きく異なる
- 人手不足による代替要員の制約:実施のための時間確保自体が、他業種以上に難しい場合がある
実施タイミングをどう設計する?
法令上、調査票の配布・回収タイミングに明確な指定はありません。ただし、夜勤明けや疲労の強い時間帯に一斉配布すると、正確な回答が得られにくくなる可能性があります。次のような工夫で対応している医療機関があります。
- Web受検の活用:紙の調査票のように一斉配布・一斉回収を前提にせず、各自の勤務の合間に回答できる形にする
- 回答期間を長めに確保する:1〜2週間程度の余裕を持たせ、シフトに関係なく回答できるようにする
- 部署ごとの実施時期をずらす:繁忙期の病棟を避けるなど、部署の状況に応じて調整する
新人看護師への配慮
新人看護師は、業務に不慣れなことに加え、患者対応や夜勤への適応といった複合的な負荷を抱えやすい時期です。ストレスチェックの結果だけに頼らず、プリセプター(新人指導担当)や師長との日常的なコミュニケーションと組み合わせることが望まれます。また、高ストレスと判定された場合の面接指導の申出は労働者本人の任意であるため、新人が声を上げやすい窓口(人事部門とは別の相談先など)を用意しておくことも有効です。
外部委託サービスを選ぶときの視点
医療機関がストレスチェックの外部委託サービスを選ぶ際は、一般的な比較ポイント(実施者の手配、料金体系、集団分析の分かりやすさ)に加えて、次の点も確認しておくと選びやすくなります。
- Web受検に対応しており、24時間いつでも回答できるか
- 部署・病棟単位での集団分析に対応しているか
- 医療機関での導入実績があるか
よくある質問(FAQ)
Q. 看護師のストレスチェックは、一般企業と違う制度が適用されますか?
A. 制度としては同じです。病院・クリニックも労働安全衛生法上の「事業場」であり、常時使用する労働者数に応じて実施義務・努力義務の基準が適用されます。ただし、夜勤・交代制勤務がある点など医療機関特有の事情に配慮した実施設計が必要になります。
Q. 夜勤明けの看護師に、いつ調査票を配布すればよいですか?
A. 法令上の指定はありませんが、夜勤明けの回答は結果に影響しうるため、勤務シフトを踏まえた余裕のある回答期間の設定が望まれます。Web受検であれば各自の勤務の合間に回答できます。
Q. 看護師のメンタルヘルス不調は、実際にどの程度報告されていますか?
A. 日本看護協会の調査(2025年病院看護実態調査)によると、病気により1か月以上の連続休暇を取得した正規雇用看護職員のうち、メンタルヘルス不調者がいた病院は79.5%、平均人数は5.4人でした(2024年度実績)。同調査で正規雇用看護職員の離職率は11.0%と報告されています。
参考・出典
※本記事はストレスチェック制度と医療機関特有の実施上の配慮を分かりやすく解説するものです。引用した離職率・メンタルヘルス不調に関する数値は日本看護協会の調査(2024年度実績、2026年3月31日発表)に基づくものであり、ストレスチェックの実施状況そのものを示す統計ではありません。個別の実施設計は医療機関の状況により異なりますので、詳細は専門家や最新の公式情報をご確認ください。