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法律・制度解説

ストレスチェックを実施しないとどうなる? 罰則・行政指導のリスクを解説

公開日:2026年7月14日 / 最終更新:2026年7月14日

🤖 3行でわかる罰則・行政指導のリスク

  • ストレスチェック未実施そのものへの直接の罰則規定は、現時点で確認できる範囲ではない。ただし常時50人以上の事業場は労基署への実施結果の報告義務があり、これを怠ると労働安全衛生法第120条第5号により50万円以下の罰金の対象になり得る。
  • 2028年4月に義務化される50人未満の事業場には、労基署への報告義務は課されない方向で整理されており、報告義務違反を理由とした罰金の対象にもならない見込み。
  • 刑事罰がなくても、未実施は労働基準監督署の行政指導(是正勧告等)の対象になり得るほか、メンタルヘルス不調が起きた際に労働契約法第5条の安全配慮義務違反を裏付ける事情として民事上の損害賠償リスクにつながりうる。
監修

監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)

中小企業向けストレスチェック外部委託サービスの比較メディア「ストレスチェック比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省・法令の公表資料をもとに作成し、内容を確認しています。

「ストレスチェックをやらないと、うちの会社は罰金を取られるのか」——2028年4月の義務化拡大を前に、こうした不安の声をよく聞きます。結論から言うと、実施しないこと自体への直接の刑事罰則は、現時点で確認できる範囲ではありません。ただし、それは「何もしなくていい」という意味ではありません。この記事では、現行制度における罰則の正確な範囲と、罰則がなくても実務上どんなリスクがあるのかを、一次資料に基づいて整理します。

ストレスチェック未実施に直接の罰則はある?

労働安全衛生法上、「ストレスチェックを実施しなかったこと」自体に対する直接の刑事罰則規定は、現時点で確認できる範囲ではありません。これは、法律で義務づけられている行為の中でも、罰則の付き方が一様ではないためです。実際に罰則が定められているのは、実施義務そのものではなく、実施結果の労働基準監督署への報告義務という、別の手続きの部分です。この違いを混同すると、必要以上に恐れたり、逆に安心しすぎたりする原因になるため、まず正確に切り分けておきます。

50人以上事業場の「報告義務違反」への罰則とは

現行制度(2015年12月施行)では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に、ストレスチェックの実施と、実施結果を「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」として労働基準監督署へ報告することが義務づけられています。この報告を怠った場合、労働安全衛生法第120条第5号に基づき、50万円以下の罰金の対象になり得ます。

ここで重要なのは、この罰則が「ストレスチェックを実施しなかったこと」に直接科されるのではなく、「実施結果を報告しなかったこと」という手続き違反に科される、という構造です。実務上は実施していなければ報告のしようがないため、結果として未実施の事業場が処罰対象に近づく形にはなりますが、法律上の建てつけとしては報告義務違反への罰則である点を正確に理解しておく必要があります。

2028年義務化の50人未満事業場にも報告義務はある?

2028年4月1日に義務化が拡大される、常時50人未満の事業場については、労働基準監督署への報告書提出は義務化されない方向で整理されています。50人以上事業場とは異なる扱いです。報告義務がないということは、その報告義務違反を理由とした前述の50万円以下の罰金の対象にもならない、というのが現時点での見立てになります。

ただし、これはあくまで現時点(2026年7月)で確認できる制度設計の方向性です。改正労働安全衛生法(正式名称「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」・令和7年法律第33号・2025年5月14日公布)の施行日は、施行期日を定める政令(令和8年政令第195号・2026年6月10日公布)により2028年4月1日と正式に確定しましたが、報告義務の要否を含む実施方法の詳細は、今後の省令・指針の改正によって変わる可能性があります。断定はせず、最新の公式情報を継続的に確認することをおすすめします。

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罰則がなくても行政指導・是正勧告の対象になり得る

刑事罰がないからといって、労働基準監督署が未実施の事業場に何も関与しないわけではありません。労働基準監督署は労働安全衛生法の遵守状況について、事業場への臨検(立入調査)や指導を行う一般的な権限を持っており、法令違反の疑いが認められれば是正勧告・改善指導の対象となり得ます。是正勧告に従わず改善が見られない場合、より重大なケースでは使用停止命令等の行政処分に発展する可能性も制度上は存在します(これはストレスチェックに限らず、労働安全衛生法違反全般に共通する枠組みです)。

報告義務がない50人未満の事業場であっても、労働基準監督署が実施状況そのものを把握・確認する機会がなくなるわけではない点には留意が必要です。

「安全配慮義務違反」という、もう一つのリスク

罰則の有無よりも実務上重要なのが、労働契約法第5条の安全配慮義務との関係です。同条は、使用者が労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務を定めています。ストレスチェック自体はこの安全配慮義務を直接構成する規定ではありませんが、メンタルヘルス不調による労災認定や、休職・退職、最悪の場合は自殺といった事態が発生した際、「会社が労働者のメンタルヘルスリスクを把握し対処する機会(=ストレスチェック)を持たなかった」ことが、安全配慮義務違反を裏づける事情の一つとして問題視されるケースがあります。

安全配慮義務違反が認められた場合、労働契約上の債務不履行(民法第415条)または不法行為(民法第709条)に基づき、慰謝料・逸失利益等の損害賠償責任を負う可能性があります。刑事罰である50万円以下の罰金とは比較にならない金額の民事上の賠償リスクにつながり得る点で、こちらのほうが実務上は重い論点だと言えます。「罰則がないから後回しにしてよい」という判断は、このリスクを見落としています。

今のうちに準備しておくべきこと

施行(2028年4月1日)まではまだ時間がありますが、実施体制の構築(誰が実施者になるか、外部委託するか)には準備期間が必要です。厚生労働省が2026年2月に公表した「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」も、早期の準備を前提とした内容になっています。罰則の有無に関わらず、安全配慮義務の観点から見ても、施行を待たずに任意で先行実施しておくことには一定の合理性があります。

  • 自社が2028年4月時点で対象となる規模かを確認する(従業員数の考え方は既存記事「50人未満ストレスチェック義務化ガイド」参照)
  • 産業医の有無を確認し、いない場合は地域産業保健センターまたは外部委託サービスの利用を検討する
  • 費用感を把握し、複数社を比較したうえで自社に合った実施方法を選ぶ

よくある質問(FAQ)

Q. ストレスチェックを実施しないと、会社は罰金を科されますか?

A. 実施しないこと自体への直接の罰則規定は、現時点で確認できる範囲ではありません。ただし常時50人以上の事業場は実施結果の労基署への報告義務があり、これを怠ると労働安全衛生法第120条第5号に基づき50万円以下の罰金の対象になり得ます。これは報告義務違反への罰則であり、未実施そのものへの罰則とは区別されます。

Q. 2028年に義務化される50人未満の事業場にも、労基署への報告義務はありますか?

A. 50人未満の事業場については、労基署への報告書提出は義務化されない方向で整理されています。そのため報告義務違反を理由とした罰金の対象にもならない見込みですが、詳細は今後の省令・指針の改正で変わる可能性があるため最新の公式情報をご確認ください。

Q. 罰則がないなら、実施を後回しにしても問題ありませんか?

A. 刑事罰がないことと、リスクがないことは別問題です。未実施は労基署の行政指導の対象になり得るほか、メンタルヘルス不調が起きた場合に安全配慮義務違反を裏づける事情として民事上の損害賠償請求につながるリスクがあります。

参考・出典

※本記事は罰則・行政指導に関する一般的な制度の枠組みを分かりやすく解説するものであり、個別の事案における法的判断を示すものではありません。実施義務・報告義務の詳細は今後の省令・指針の改正により変わる場合があります。安全配慮義務違反の該当性や損害賠償責任の有無は個別事情により異なりますので、具体的な判断は弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。

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